人気ブログランキング | 話題のタグを見る
野菜づくりと地球とわたしたち
健康で幸せな暮らしのためにM-easyは新世代の農業スタイルをご提案します。
http://www.m-easy.co.jp

常滑市で無農薬栽培に挑戦中!安心して食べられる、とびきりおいしい食を届けていきたいです。

by m-easy
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
ご訪問ありがとうございます
■株式会社M-easy
http://www.m-easy.co.jp

■メール
info@m-easy.co.jp
カテゴリ
たけうちのささやき
以前の記事
2013年 01月
2012年 06月
2012年 05月
more...
ブログパーツ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
朝日新聞とNHKの取材で話した内容です
Is well-ripened compost so good ?


たけうちです。

年末に朝日新聞の取材を受け、年明けに記事になったようです。神野さんにコピーを見せてもらいました。
そして今日はNHKの人が取材に来ました。次の月曜日にカメラを持ってやってくるそうです。

毎度毎度時間をかけて説明をするのが大変だし、聞くほうも理解するのが大変だと思うので、ここに文章化しておきます。
こんなことを話しました。ページにも放送時間にも限りがあるので、正しく伝わらないのもやむをえないかもしれませんが、けっこう丁寧に説明しました。


以下、話した内容。(朝日+NHK)

無農薬、無化学肥料で栽培しています。
ですが、偏見を持って取材をしてもらっても困るのでまず最初に言ったのは、農薬と化学肥料の使用を否定はしていないということです。
朝日新聞には「農薬は毒だ」と確かに言ったのですが、農薬を使う人を批判するつもりはないです。

農薬と化学肥料を全否定すると世界人口を支えられないと思うからです。自分の身を毒にさらしながらみんなの食べ物を作っているのですから。

化学肥料は正しく適量を使えば毒ではないと思います。
これには記者が驚いていました。こんなことに驚く記者に驚きました。
窒素肥料のやり過ぎは毒になりますが、化学肥料に限ったことではありません。有機肥料でも窒素を与えすぎれば硝酸だらけの危険な野菜になるし、アンモニアだらけの悪臭土壌にもなります。

化学肥料でミミズは殺せません。化学肥料を使わなくても、土がやせればミミズは減ります。
化学肥料で土が硬くなるのはたぶん次の現象だと思います。

石灰肥料(カルシウムイオン)+リン酸肥料(リン酸イオン) → リン酸石灰↓

リン酸石灰は骨みたいなもので水に溶けにくくなります。かちかちで蓄積です。
石灰とリン酸の無駄遣いです。もったいないので同時混合施用は避けた方がよいと思います。
うちでは化学肥料は使いませんが、使うのならば石灰とリン酸が接しないように離して施用するのがよいと思います。試していないのでこれ以上はなんとも言えません。


持続可能な社会作りを考えたときに、輸入食料飼料や輸入化学肥料に依存していたら日本に栄養分が蓄積し、河川や湖沼、近海の富栄養化(水が汚くなること)につながります。そうならないためには、地域で出てくる栄養分を肥料として使う有機農業が前提となります。(※参照 名古屋大学環境額研究科 高野雅夫先生)

というわけで、ここ大谷で着目しているのは海岸に漂着しているアオサ(と竹)の利用です。
海苔養殖の天敵で、海岸に大量に漂着し、異臭を放っています。
海水中には微量ミネラルが含まれているので、うまくアオサを使えば糖度の高いタマネギなどが栽培できるのではないかと試験中です。使い方は秘密です。


農薬に話は戻りますが、農業技術が進歩すれば農薬は減るべきだと思っています。同様に医療技術が進歩したらお薬は減るべきでしょう。
だから無農薬に挑戦しています。農薬が必要になるのは病気や害虫をマネジメントしきれなくなったときです。農業環境の知見が増えれば、いずれ代替技術でマネジメントできるようになると考えています。

自然農薬でもニコチン液とかは安全だとは思いません。毒です。漢方薬でも致死量摂取すれば死にます。致死量なので死ぬのは当然ですが。程度の問題で、適度に使えば良いと思います。ただしニコチン液はナス科のウイルス病があるかもしれないので微量でも絶対に使いません。

余談ですが、タバコを吸いたい人は吸えばよいと思います。火種の貴重な人です。煙は気にしません。ですが、ナス科への接近はお断りです。ナス科とは、トマト、ナス、ピーマン、ジャガイモです。
このウイルスは人体には影響ありません。

IPMという考え方があります。Integrated Pest Management 総合害虫管理の略称です。
最近FAOで聴いた話では、インドネシアでIPMの取り組みで15%の農薬削減、15%の収量増加を実現したそうです。

IPMの基本は観察です。害虫がいても益虫が増加傾向にあれば農薬を控えます。害虫がいなかったら農薬散布は不要です。
日本は防除歴というカレンダにしたがって農薬を問答無用でまいているので、IPMの基本だけでも簡単に農薬は減らせます。
減農薬は容易ですが、無農薬は難易度が高いです。アオムシとヨトウムシの進化がすごい。

BT剤という微生物農薬があります。蛾や蝶の幼虫を選択的に殺す毒素を出す細菌です。どうしてもアオムシとヨトウムシが抑えられない事態になったらこの微生物農薬を使おうかとも検討しています。けっこう有名な微生物農薬で有機JASでも認可されています。人間に対する毒性はないそうです。
コストがかかるのでわざわざ使うつもりはないですが、緊急時用。
ちなみに、遺伝子組み換え作物にはこのBTの遺伝子が入っているとか。

うちの農園にはクモがたくさんいます。ただしネットを作る怠け者タイプではなく、地をかけずり回る徘徊タイプのクモです。増やしました。
ミミズは夏の日照りで激減したので、今はミミズ保護キャンペーン中です。ミミズを保護するためならば、ビニルマルチもありだと思います。ねらい通りビニルマルチの下にはミミズが増えているようです。

無農薬に挑戦していますが、これって農業技術の向上を目指す人にとって当然の目標ではないでしょうか。
インプットを減らせばその分農家は儲かるんだから。農薬使って儲かるのは農薬メーカーと販売店。



小休止



化学肥料と農薬によって、農家は勉強しなくてもきれいな野菜を作れるようになってしまいました。だけど本来は生命を扱う仕事で、医学に匹敵する知識、智恵が必要だと思います。農学は総合科学で、有機肥料は複雑系です。

自然農法とよく勘違いされますが、昔に戻るつもりはありません。昔の知識も今の知識も取り入れて、未来に通用する農業技術に持って行くつもりです。

キューバは時代の最先端で、ソビエト崩壊による食糧危機から有機農業で立ち直った国で、それを支えたのは危機の前から研究を続けていた農学者らです。5年くらい前に吉田太郎さんにキューバの農家へ連れて行ってもらいました。感謝。
お国柄、情報不足なのがかわいそうでしたが、立派でした。馬鹿にしてはいけません。


今の日本の有機農業の考え方には疑念があります。堆肥はいつから完熟にして大量投入をするようになったのでしょうか。
江戸や明治の農業は当然有機農業ですが、こんなではありません。こんなに家畜はいないし、切り返す重機もない。肥だめで人糞を切り返したりはしないでしょう。
当時は完熟堆肥ではない。養分のロスが多い。完熟堆肥は肥料分がないから、今の有機農家は1反に何トンもの堆肥を入れています。すごい量。

有機物は未熟でいいと思います。問題は未熟有機物をいかにアンモニア腐敗をさせずに制御するかです。それ以上は秘密。

有機肥料が化学肥料よりも優れている点があります。
植物はある程度の大きさの有機物は吸収できるということです。最小単位の化学肥料を吸収するよりも、ある程度の大きさに構築された有機物を吸収する方がエネルギー効率がよいので、結果として良く育ち、栄養価の高い作物になると考えています。このときの有機物は完熟堆肥のようなものではなく、アミノ酸やビタミンのようなものを想像しています。(まるで食品添加物)
もちろん肥料の配合、調合は秘密です。


今の有機農業には発想の転換が必要だと思います。当たり前だと思っていることが実は根拠があいまいだった、ということがいろいろあると思います。
NHKさんにたとえ話をしたのは、なぜ石鹸で体を洗うのか考えたことがあるかということです。みんな当たり前だと思っている行為ですが、本当によいのでしょうか。
石鹸でごしごし洗うと、皮膚を保護している粘膜や表皮常在菌が落ちてしまいます。表皮常在菌が減ると、水虫菌やワキガ菌が取り付きやすくなります。
ぬるま湯で洗えば垢は落ちるらしいです。

農業には石鹸みたいな話がごろごろとあるので、有機農業の技術研究は楽しくてしょうがない。底なし沼に深いけれど、天井知らずに発展しそう。
発想の転換と無駄取りを徹底してやれば有機農業はよくなると思います。



再び小休止



農学の科学としての行き詰まりを感じています。
今の農学が遺伝子技術に向かうのはやむを得ないと思っています。再現性と論文を書くことが大前提の状況では有機農業の研究は困難でしょう。有機農業で真剣に論文を書こうとしたら、膨大なページ数になり掲載にお金が余分にかかり、時間がかかってさらに実験の再現が困難。これでは出世できない。
有機農業の研究は必要だけどやりきれない状況だと感じます。最先端は篤農家。農文協が支えです。


大学が理学部だということと農業をやっていることの接点がわからないという質問が今まで何回もありました。8回くらい。同様に院生だと勘違いされることも多いですが、大学院には進学していません。
名古屋大学理学部の地球惑星科学科(略してeps)卒業。大学一年のときからここのセミナーとかに通っていました。

そこで、生命と地球が共進化(それぞれが相互に影響を与え合って進化)しているということを学び、人類の存在もかつての生命のように地球に影響を与えているということです。
で、過去の歴史を学び、未来に人類はどのような生き方をしたらハッピーライフを過ごせるかということをみんなで考えていました。(持続性学)

人類のハッピーライフに、衣・食・住・エネルギーの持続的確保が必要だね、とわかりました。
それで有機農業に至る。自己矛盾なし。これでよろしいでしょうか。


朝日新聞の記者さんにはこれで食っていけるのかと問われましたが、だれかがやらなきゃハッピーライフは築けないですよ。
逆に、新聞の方こそ、この先食っていけなくなると思うがどうするのかと、ついつい口が滑ってしまいましたが。



再々小休止



炭の話もしました。詳しいことはあいち炭やきの会の会報誌「すみびと」を読んでもらうのがよいです。
朝日新聞には別のページに「炭やきは地球を救う」ということで記事になっていましたが、こちらは記者さんがしっかり復習と確認をしてくれたみたいでよく書けているなと思いました。○
だけど、「若者から聞いた…」って、名前出してくださいよ。「M-easy」「あいち炭やきの会」「竹内匡史」のどれか一つでも出してもらわないと、何のために長々と語ったのだか。どれか一つでもあれば◎なのに。残念。

(ここは後で記事を張っておきます。)

畑の隣の荒れた竹林をばっさばっさと切り倒し、炭化して、ちょっと処理して、それで土壌改良に使用しています。いろいろいいんです。(参照 あいち炭やきの会 と The International Biochar Initiative)

今後もメディアの人はどんどんバイオチャーやテラプレタについて情報発信をしてもらいたいなと思います。
もしそうなれば、朝日新聞を買ったり、テレビをつけたりするようになるかもしれません。


他にもいろいろ話しましたが、きっと記事にはできない話題ばかりなので書きません。



追伸

お正月によい本を見つけました。
【解説】日本の有機農業 土作りから病害虫回避、有畜複合農業まで  涌井義郎/舘野廣幸 著 筑波書房 ISBN978-4-8119-032903 本体3,000円

取材の人は予習としてあらかじめ目を通していただくと話がさくさく進むでしょう。

有機農業を始める人はぜひ読んでおくとよいと思う良本です。一ヶ月新聞を止めてでもお金を捻出して買うべきです。(と書くと怒られるかな。)
by m-easy | 2009-01-14 21:34 | たけうちのささやき